パーソナルオファー

パーソナルオファー

マーケティングのパーソナライズ化というコンセプトの歴史は1990年代まで遡ります。しかしながら、現在は手動で事前に設定されたセグメントに基づいてオファーをターゲットとしたり、受信者の名前を使ってメッセージをパーソナライズしたりするのは対象となる顧客を引きつけるには不十分である。ハイパー・パーソナライズ化、又はマーケティングのインディビジュアライゼーションの新基準は、技術的な制限のせいで不可能であるとされてきました。しかし現代の技術の進歩および収集データの高可用性に伴い、マーケターの想像を超えるパーソナライゼーションが実現しました。

オファーパーソナライゼーションのレベル

個々の顧客を対象とする販売オファーのパーソナライゼーションは、ターゲットオーディエンスの規模、技術的多様性、ビジネスの複雑性などに応じて、様々なレベルで行われます。一般的には、パーソナライゼーションのレベルが高くなればなるほど、より複雑な技術的ソリューションが必要となり、リスクも高くなりますが、ビジネスにおいてはより多くのメリットを生み出す可能性が出てきます。

図1– パーソナライゼーションオファーのレベル

1. マス・オファー

対象を全く設定しない又はほとんど設定しない、最も一般的で広範囲にわたるタイプのマーケティング活動である。

例:全顧客ベースの大衆向けキャンペーンメール、決められた期間内で全ての商品を5%割引するなど。


2. ロイヤルティオファー

特定のブランドに絞り込んだマスオファー、又は基本的なロイヤルティプログラムに沿ったキャンペーンなど。

例:特定のFMCGブランドにおいて、一つ購入するともう一つは無料、それに加えて/又は、ロイヤルティポイントを倍にするなど。


3. ターゲットを 絞っ たオファー

ターゲットオーディエンスが設定されたオファーで、通常、カスタム属性(人口統計など)が選択されているか、又は購入履歴に基づいたセグメントとして事前に設定されている。

例:特定の年齢層の顧客や過去に同じカテゴリからアイテムを購入した顧客向けに、商品を特別価格で提供するなど。


4. パーソナライズされたオファー

ターゲットを絞ったオファー、又はロイヤルティオファーと同じタイプであるが、追加的な機能を使用して個々の顧客レベルにおいてより関連性の高いオファーや特別なオファーを提供する。

例:メンバーの誕生日から2週間以内に購入したものに対して、ロイヤルティポイントが2倍になるなど。


5. インディビジュアライズドオファー/ハイパーパーソナライズドオファー

顧客の好みや生活水準、性格などに基づいてインディビジュアルなオファーをするワンラックアップのパーソナライゼーション。インディビジュアルなオファーは各個人に対し異なる方が好ましい。

例:2週間以上何も購入していない顧客Aに対し、製品の割引又はロイヤルティポイントの引き換えとしてボーナス特典を付与するなど。


表1– 様々なパーソナライゼーションレベルにおける重要な要素の比較

代表的な目標対象となるターゲットグループの規模技術的およびビジネスにおける複雑性潜在的なリスク/チャレンジ
マス(大衆向け)
  • 在庫回転率の急速な増加
  • 短時間で新規顧客獲得
顧客ベース全体
  • 限定的かつ長期的に利益が生じる
  • ブランドロイヤルティが測定予想範囲で増加した場合、検討の余地あり
ロイヤルティ
  • 特定のブランド又は製品に顧客がより多くの関心を引く
  • 特定のブランドの得意客に特典を用意する
顧客ベース全体、又はロイヤルティプログラムの会員通常は、ロイヤルティプログラムプラットフォームの投資が必要となる
ターゲットを絞った
  • 特定の製品とターゲットとなり得る対象者にアップセル又はクロスセルする
  • 宣伝対象製品を選択したセグメントにターゲティングする
顧客ベースのセグメント中から高
  • セグメンテーションでは、いくつかの予測を行い、顧客ベースの十分なデータを取得しなければならない。セグメンテーションに欠陥がある場合、ターゲティングにも問題が生じる可能性がある
  • 特定の業界およびビジネスドメインに大きく依存する
パーソナライズされた
  • ロイヤルティプログラムに参加している顧客に特典を提供する
  • 顧客ベースのエンゲージメントを提供する
  • ソーシャルメディアで話題になる
  • 顧客離れを減少させる
  • 効果的なアップセル/クロスセル
個人的に対応するセグメント又は個人
  • 収集されたデータと適用されたデータの分析方法と手法の精度に依存する
  • 高度な技術とビジネスケイパビリティが必要となる。
  • 高度にパーソナライズされたオファーの手動設定はほとんどの場合不可能である
個別化された個人高から最高


なぜ、パーソナライズに注目すべきなのか。

様々なレベルのオファーパーソナライゼーションがすでに導入されている現在、パーソナライゼーションへの投資がいかに重要であるかを認識するべきでしょう。


1. 効果的である

マーケティングオファー・パーソナライゼーションを行った実例として、ケーススタディ、成功例、学術研究論文などに、定量的又は定性的な面からのメリットが多く公開されています。以下はその一例です。

  • コンバージョン率の増加

    個々の顧客の検索や購入履歴に基づいて、Eコマースベンチャーのランディングページを調整するなどの方法でオンラインB2Cインタラクション・エクスペリエンスをパーソナライズすることにより、コンバージョン率を大幅に高めることができます。例として、オランダの保険会社FBTOは、リアルタイムパーソナライゼーション・テクノロジーとウェブサイトのアクティビティ、閲覧履歴などに基づいた個別のメッセージングを実装した結果、コンバージョン率を15%増加したという報告があります。又、同社は、何も購入せずにウェブサイトを離れた訪問者のフォローアップ・コミュニケーションをパーソナライズし、さらに30%のコンバージョン率を達成しました[1]。

  • オファーの知覚価値が高まる

    ロイヤルティプログラムにおいて、メンバーのグループに対しプログラムへのさらなる関与を推奨する特典は、他のグループにとっては全く無関係です。2013年にストラスブール大学で、マイレージプログラムの様々な種類の特典がパーチャスインテンシティとカウンター・パースエイジョン抵抗が測定され、会員全体のロイヤルティにどのように影響を及ぼすかについて大規模な調査が行われました。この調査の主要な結果として、顧客のモチベーションと購入の方向性に応じて、特典の知覚価値が異なるということが報告されました。よって、特典を顧客のロイヤルティ測定のメトリックと相関させ、それに応じて特典をターゲットにしてパーソナライズすることは非常に有益だということが分かります [2]。

  • 顧客エンゲージメントを改善できる

    カスタマー・リレーションシップ・マネジメントの観点から、パーソナライゼーションオファーは、B2Cリレーションシップライフサイクルの全ての段階において、顧客間の製品又はサービスの満足度の向上につながります。これは特に、顧客獲得から顧客維持の段階に言えることで、パーソナライゼーションの結果として口コミマーケティンが増加し、インタラクションが減少しているクライアントに対しては効果的なウィンバックキャンペーンになることが研究により証明されています。全体的には、パーソナライズ戦略を実装すると収益性が26%、株式時価総額が12%向上すると言われています[3]。

2. 多くの業界でスタンダードとなり、顧客の期待の変化に応える

2013年、Infosysは米国の1000人の消費者及び50社の小売業者からデータを収集し調査した結果を発表しました。

  • パーソナライゼーションを受けた経験がある消費者の59%は、商品の購入を決定する上でパーソナライゼーションが大きく影響していると考えています。
  • また62%は、以前受けたパーソナライゼーションに良い印象を持ち、再びパーソナライズされたオファーやプロモーションを受けたいと考えています。
  • 小売業者が最もよく使うパーソナライズの4つの利点は、売り上げの増加(72%)、利益の増加(61%)、オンライントラフィックの増加(58%)そして、顧客ロイヤルティの増加(55%)でした。
  •  小売業者の62%がパーソナライゼーション・オファー・テクノロジーをすでに実装しており、20%は近々パーソナライゼーションを行う予定であると述べています[4]。

端的に総括すると、パーソナライゼーションは、6年前からすでに顧客の期待に応える直接的な方法として存在していましたが、近年になり小売業者がその有効性を認識し始めたということです。6年前と比べて変化したことは、パーソナライゼーションはもはや革新や大々的な進歩ではなく、小売業界のマーケターにとってスタンダードとなったということです。



なぜ、従来のパーソナライゼーションは不十分なのか。

セグメントベースのパーソナライズには明確な利点があります。しかし、これは常に企業と最終消費者間で行われる個別なアプローチのビジョンとマスオファーの間にある妥協だとみなされてきました。セグメンテーションから個別のオファーへ移行すると、限られた大多数のトラップが回避できるという包括的な利点があります。

図2に示すように、セグメントベースのパーソナライゼーションシステムが過去に全ての製品を購入したクライアントで構成されるセグメントの顧客に対する次のオファーを決定する、という状況があったとします。

図2–限られた大多数の図

この例では、セグメント内の10人のうち3人が、製品Aを購入した後に製品Bを購入しています。したがって、非常に単純なセグメントベースのさらなるオファーのロジックを適用するなら、新しく追加された全てのセグメントメンバーに製品Bを提供しなければなりません。ただし、このアプローチでは、メンバーの残りの70%は、実際には製品Bを購入しなかったという事実を完全に無視していることになります。したがって、このシナリオに基づくさらなるオファーは、実際には正確性に欠けるにも関わらず、セグメントメンバーの大多数の購入決定に依存しています。





出典


[1] PR Newswire Association LLC, “Instant 15% Increase in Convertion Rates for FBTO Due to Magiq's Digital Trigger-Based Marketing and Real-Time Personalisation Technology,” PR Newswire Association LLC, New York, 2009.
[2] L. Meyer-Waarden, “The impact of reward personalisation on frequent flyer programmes' perceived value and loyalty,” Journal of Services Marketing, vol. 27, no. 3, pp. 183-194, 2013.
[3] A. Bleier, A. De Keyser and K. Verleye, Customer Engagement Through Personalization and Customization., R. W. Palmatier, V. Kumar and C. M. Harmeling, Eds., Cham: Palgrave Macmillan, 2018.
[4] Infosys, “Rethinking Retail,” Infosys Limited, Bangalore, India, 2013.
[5] J. Brown, “The Future of Customer Engagement and Commerce,” 14 September 2018. [Online]. Available: http://www.the-future-of-commerce.com/2018/09/14/marketing-evolution-personalization-to-individualization/.
 

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